商業登記実務の改正点
会社法の改正がなされ、商業・法人登記の登記実務にも大きな影響を及ぼしています。
今回は、令和3年2月15日から開始されている商業登記実務の改正点を整理してみたいと思います。
1.印鑑提出の任意化
会社の設立登記手続きのオンライン化の議論の中で、書面による印鑑の提出の在り方が問
われた結果、印鑑の提出義務を定めた商業登記法の規定が削除されました。
これにより、
ⅰ オンラインによる登記申請情報に代表者が電子署名するケース
ⅱ 代理人による登記申請をする場合、代表者が委任状に電子書面するケース
上記の2つのケースによる場合には、法務局に印鑑の提出を要しないことになりました。
2.使用することができる電子証明書の見直し
改正により、オンライン申請における申請情報に使用する電子証明書については、商業登
記に基づく電子証明書に限定されなくなりました。
すなわち、本人申請による登記申請については、従来の商業登記電子証明書に加え、公的
個人認証サービスよる電子証明書及び法務大臣の定める電子証明書も使用することがで
きることになりました。
また、代理人による登記申請については、委任状以外の添付書面情報については、上記電
子証明書加え、商業登記規則に定められた法務大臣の定める電子証明書も使用すること
ができるようになっております。
3.電子証明書の証明請求
従来は、商業登記電子証明書の請求方法は書面申請にのみに限定されていましたが、改正
により、オンラインによる請求が可能となりました。
4.添付書面の押印規定の見直し
押印規定の見直しが、商業登記手続きに関しても図られ、法令に押印に関する規定が定め
られているものの押印を求める必要性がないものや、押印根拠が通達や実務慣行に基づ
くものについては、見直すこととされました。代表的なものとしては以下のとおりです。
ⅰ 株主リスト
ⅱ 資本金の額の計上に関する証明書
ⅲ 定款(設立登記登記申請を除く)
押印の有無について審査を要しない書類が増えたことになりますが、押印のない書類で
は、会社代表者の決裁を得たことが不明であることから、我々司法書士実務としては、従
来と同様に、法務局届の法人実印を押印された方が望ましいかと考えます。
また、このような押印の有無について審査を要しない書類であっても、これらが書面では
なく電磁的記録として作成されている場合は、商業登記規則により電子署名をする必要
があることに注意する必要がございます。