株式交付制度の概要

夏も盛りになりまして、氷水などうれしい季節になりました。

さて、少し前のこととなりますが令和元年の会社法改正により令和3年3月1日施行された株式交付制度について整理してみたいと思います。


(株式交付とは)(会社法第2条第32号の2)

株式交付とは、株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社を譲り受け、当該株式の譲渡人に対して当該株式の対価として当該株式会社の株式を交付することをいう。

(*上記その子会社とは他の株式会社の議決権の総数に対する自己の計算において所有している議決権の数の割合が100分の50を超えている場合における当該他の株式会社に限る。)


(用語の定義)

株式交付親会社とは株式交付をする株式会社

株式交付子会社とは株式交付親会社が株式交付に際して譲り受ける株式を発行する株式会


(制度趣旨)

従前からある株式交換制度では買収会社が被買収会社を完全子会社(100%株式取得)としますが、株式交付制度は子会社とするものの完全子会社とすることまで予定しない場合の方法として創設された。


(株式交付することのできる会社)

株式会社に限られる。(株式交付親会社及び株式交付子会社ともに)

ただし、更生株式会社は可能だが、清算株式会社・破産手続開始決定を受けた株式会社は不可。


(おおまかな株式交付の手続き)

①株式交付親会社が単独で株式交付計画を作成

(*計画書には株式交付子会社の株式の譲渡人に交付する株式交付親会社の株式の数等を記載するが、株式交付に際して株式交付親会社の株式を全く交付しないことは想定していない。)

②株式交付子会社の株式の譲渡し

 株式交付親会社による株式交付計画の内容等の通知→譲渡しの申込→割当→通知または総数譲渡し契約の締結

 *募集株式発行の手続きを参考に規定が作られた。

③株式交付親会社で必要な手続き

 ア 株式交付計画の承認  効力発生日の前日までに株主総会特別決議で承認

   *簡易株式交付の場合

     (株式交付において交付する対価の合計額の株式交付親会社の純資産額に対す

      割合が5分の1を超えない場合には、株主総会の特別決議によって、承認を

      受けることを要しない。)

 イ 債権者保護手続き

   原則として債権者保護手続きを要しないが、株式交付親会社が、株式交付に際して

   株式交付子会社の株式等の譲渡人に対して当該株式及び新株予約権等の対価として

   金銭等(株式交付親会社の株式を除く。)を交付する場合には、株式交付親会社にお

   いて財産の流出が生じ、その債権者が害されるおそれがあることから、当該金銭など

   が少額(株式交付親会社の株式を含む対価の総額の20分の1未満)である場合を除

   き、債権者保護手続きが必要となる。 

   *株式交付子会社は株式交付手続当事者ではないため、株式交付子会社の債権者保

    護手続きは特にない。


(株式交付の効力発生)

株式交付の効力は、株式交付計画に定めた効力発生日に生ずる。


(登記の期間)

株式交付の効力発生日から2週間以内

(株式交付親会社に発行済株式総数・資本金の額等に変更がある場合)


まだ、あまり実務では実例が見受けられないようですが、少しでもお役に立てれば幸いです。

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