相続の新ルールをおさらい!
今回は、遺産分割に関する新たなルールと相続登記の義務化に焦点を当てます。
相続が発生し、遺言がない場合、亡くなった方の遺産は原則、相続人により共有されます。
遺産分割の際には法定相続分を基礎にしつつ、生前贈与や特別な貢献など個別の事情を考慮して相続分を算定するのが一般的です。しかし、遺産分割がされないまま時間が経過すると、相続人が増えたり証拠がなくなる可能性があり、遺産の管理・処分が難しくなります。そのため、遺産共有関係の早期解消を促進し、所有者不明土地の発生予防等の観点から法改正が行われました。
◆特別受益と寄与分の主張に制限(令和5年4月1日から)
相続開始後10年経過した後に行う遺産分割は、原則として特別受益や寄与分の主張が制限されます。具体的相続分ではなく、法定相続分又は遺言による指定相続分によって画一的に行われます。なお、施行日より前に発生した相続にも適用されますので注意が必要です。施行時から5年間の猶予期間も設けられています。
相続人によっては、10年以内に遺産分割協議を始めないと、特別受益や寄与分の主張できず、取得できる財産が少なくなる可能性があります。具体的相続分を確実にするためには、相続開始から10年を経過するまで(猶予期間の対象の場合は令和10年3月31日まで)、家庭裁判所に遺産分割の請求をすれば、具体的相続分による遺産分割が可能です。なお、相続人全員が合意すれば、10年経過後も具体的相続分が可能です。
◆相続登記申請の義務化(令和6年4月1日から)
相続や遺贈によって不動産の所有権を取得した場合、3年以内に相続登記を申請する義務が発生します。相続開始を知り、かつ所有権を取得した日から3年以内に登記を行う必要があります。なお、こちらも施行日より前に発生した相続にも適用されますので注意が必要です。
また、遺産分割により不動産の所有権を取得した場合、遺産分割が成立した日から3年以内に所有権の移転更登記を申請する義務が発生します。令和6年4月1日以前の遺産分割でも、令和9年3月31日までに登記の申請が必要です。これらの義務に違反すると、10万円以下の過料の対象となります。
遺産分割がまとまらずに時間がかかりそうな場合、「相続人申告登記制度」を利用することができます。この制度では、相続開始を知り、相続人であることを法務局の登記官に申告することで、相続登記の義務を果たしたものとみなされます。手続きが簡便であるため、遺産分割協議の成立を待つ一時的な対策として利用することができます。
改正後も遺産分割自体には法的な期限はないものの、相続の新ルールへの対応や相続手続きをスムーズに行うためには、専門家に相談しながら進めると安心です。相続登記をしていない不動産がある、自分が該当するのか心配、当事者が多くて必要な資料を集めるのが難しい、そんな方は相続登記の専門家である司法書士にぜひご相談ください。遺産分割協議が折り合わず、相続人間でもめそうな場合や難航する場合は、弊社グループの弁護士を紹介することも可能です。