「紀州のドン・ファン事件」から学ぶ相続の本質
相続トラブルは、お金持ちだけの問題ではありません。財産の大小に関わらず、相続人の意見の対立や感情のもつれが「争族」につながるのです。
その象徴とも言えるのが、「紀州のドン・ファン」こと野崎幸助氏の相続問題です。
先日、所属している相続研修会で、この事件を通じて相続の核心である「遺言」、「遺留分」、「相続欠格」について学んだことをお伝えいたします。
1. 遺言の有効性が争われる理由
野崎氏は亡くなる直前に「全財産を田辺市に寄付する」という遺言を残しました。
しかし、その遺言が有効かどうかが争点となり、相続人による「遺言無効確認訴訟」が起こりました。
✅ 遺言が無効になるケース
①遺言能力がなかった(認知症や錯乱状態)
②強制や詐欺による作成
③法的要件を満たしていない
この事件でも、遺言が書かれた状況や内容の合理性が問われました。
遺言を作成する際には、法律体に問題がないよう公正証書遺言を活用し、専門家のサポートを受けることも重要です。
2. 遺留分の請求
仮に遺言が有効だったとしても、一定の法定相続人には「遺留分」が認められています。
野崎氏の場合、妻には遺留分を請求する権利がありますが、兄弟姉妹には遺留分を請求する権利がありません。
✅ 遺留分のポイント
①配偶者・子・直系尊属に認められる
②兄弟姉妹には遺留分なし
③相続の開始及び遺留分を侵害する事実を知った時から一年間で消滅
遺言を作成する際には、遺言の効力が発生する亡くなった後のことも考慮しましょう。遺留分侵害額請求を受けるリスク、トラブルを回避できる内容にすることや確実に手続きができるようにすることも大切です。
3. 相続欠格とは?
この事件では、野崎氏の元妻である須藤早貴被告が殺害の容疑をかけられました。相続法では、被相続人を故意に殺害するなどした場合、その相続権を失う「相続欠格」が適用されます。
✅ 相続欠格の要件
①被相続人等を殺害・殺害未遂
②遺言を偽造・変造・破棄
③詐欺・脅迫による遺言作成
今回の裁判では、遺言の有効性とは別に、須藤被告の有罪・無罪が争われています。もし有罪なら相続欠格により財産を受け取る権利を失い、無罪なら相続権が認められる可能性があるのです。
争族を防ぐために
この事件から学べることは、遺言があるだけでは不十分であり、適切に作成・管理しなければならないということです。
✔ 公正証書遺言を作成する
✔ 遺言を執行したときにトラブルとならないよう配慮した内容とする
✔ 生前から家族と話し合い、専門家と対策を講じる
相続は、事前の準備がすべてです。「うちは大丈夫」と思わず、今からできることを考えましょう。相続に関するご相談は、お気軽にお問い合わせください!