登記懈怠による過料発生について

株式会社には、その会社登記簿の登記事項に変更があった場合、2週間以内に管轄法務局へ変更登記を申請しなければならないという法令上の義務があります。

※この2週間以内の期限を登記実務では「登記申請期限」といいます。

この登記申請期限を過ぎてしまっている状態を「登記懈怠」といい、代表取締役個人に対して最大で100万円の「過料」という罰則が科されることとなっています。

※「過料」とは、行政上の罰のことであり、刑事罰ではないので前科はつきません。


 また、代表者個人に課されるので、会社の経費にはできません。

※過料の支払いは、「過料決定通知書」に記載された方法で、指定期日までに支払います。


もっとも、登記申請期限を1日でも過ぎたら即、「過料」が発生するわけではありません。過料がかかる「目安期間」があり、東京都23区内においては「1年」、その他地方では「6カ月~1年程度」とされており、また、1年程度の登記懈怠であれば、過料の金額は2~3万円程度が殆どのようです。


それでは、過料が発生する具体的な例をみてみましょう。


(具体例)

株式会社トウマジムショでは、令和6年6月24日(月)開催の定時株主総会で取締役全員の任期が満了し、取締役3名全員が再選されたが、代表取締役の藤間太郎は、登記手続を懈怠し、翌年8月29日(金)に登記申請をした。


(過料の発生)

登記申請期限である令和6年7月8日(月)を1年2ヶ月ほど経過しており、東京都23区内における過料発生の目安「1年」を過ぎており、本件では「過料」が発生した。


(過料決定通知書の送達)

登記完了してから数か月後、代表取締役の個人住所宛へ、東京地方裁判所から「過料決定通知書」が郵送されてきます。この書面には主に次の内容が記載されています。

[過料決定通知書の主な内容]

会社法違反事件

【過料決定】商号:株式会社トウマジムショ、被審人:藤間太郎

【主文】被審人を過料金30,000円に処する。本件手続費用は、被審人の負担とする。

【理由】被審人は、左記会社の代表取締役に在任中 令和6年6月24日から2週間以内にすべき下記の登記を令和7年8月29日まで怠った。

【登記】役員の重任

東京地方裁判所民事第8部 裁判官 法務太郎


以上、今回は登記懈怠による過料についてお話をいたしました。

過料が発生する目安は6カ月~1年程度とはされておりますが、会社法上の登記申請期限はなるべく遵守できるよう、ご留意をいただけますと幸いです。


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