代表取締役等住所非表示措置につきまして 後編
今回は、令和6年10月1日からスタートした「代表取締役等住所非表示措置」という制度についてお話します。
※本記事は前編、後編に分かれて掲載しております。こちらの記事は後編となります。前編についてはこちらをご参照くださいませ。
【ケース4~代表取締役等住所非表示措置の継続~】
前編【ケース1】のその後の展開を見てみましょう。
無事に代表取締役等住所非表示措置ができた代表取締役 法務太郎(住所:東京都港区東麻布二丁目11番11号)は、翌年の令和7年6月27日付の定時株主総会の改選期で、取締役及び代表取締役に再選されることとなりました。
既に、代表取締役等住所非表示措置が実施済みの代表取締役について、その後の重任登記が行われた場合の登記記録例は次のとおりです。
【登記記録例】
上記のように、代表取締役等住所非表示措置を申し出た際の、代表取締役 法務太郎の住所「東京都港区東麻布二丁目11番11号」に変更がない限り、代表取締役等住所非表示措置は維持されていくことになっておりますので、令和7年6月27日付の重任登記の際にも、代表取締役の住所は「東京都港区」までと、最小行政区画までの表示になっています。
【ケース5~代表取締役等住所非表示措置の非継続~】
前編【ケース2】のその後の展開を見てみましょう。
代表取締役 法務太郎は、令和7年6月27日に就任し、住所「東京都千代田区霞が関一丁目1番1号」について代表取締役等住所非表示措置を行いましたが、その後、同年8月8日に引越しをして、「東京都港区東麻布二丁目11番11号」へ個人住所が変更となりました。
ここで、住所移転日から2週間以内に住所変更登記を行わなければならないという会社法上の登記義務は、代表取締役等住所非表示措置が講じられても、引き続き課されていることに注意が必要です。
ですので、代表取締役等住所非表示措置が講じられた代表取締役であっても、新たに住所変更が生じた場合は、その住所変更登記を申請する必要があります。仮に、代表取締役の住所変更登記のみを申請してしまった場合は、次のような登記記録となります。
【登記記録例】
上記のように、代表取締役の住所変更登記のみを申請したところ、その新住所が全て表示されてしまいました。
これは、代表取締役の住所移転登記の際に代表取締役等住所非表示措置の申出を行わなかったことが原因です。
代表取締役等住所非表示措置は、あくまで「その申し出がされた際の住所」が非表示の対象であり、今回のように、単に代表取締役の住所変更登記のみを申請してしまった場合は、代表取締役等住所非表示措置は「非継続」と認識され、代表取締役の新住所がそのまま登記されてしまうことになります。
もし、変更後の新住所についても引き続き、代表取締役等住所非表示措置を継続されたい場合は、その新住所について改めて代表取締役等住所非表示措置の申出を行う必要があります。住所非表示申出をした場合の登記記録例は次の通りです。
【登記記録例】
上記のように、令和7年6月27日付の就任登記、令和7年8月8日付の住所移転登記では、いずれも代表取締役の住所が一部非表示になっています。
これは、その就任登記および住所変更登記のそれぞれで、代表取締役等住所非表示措置の申出が行われたからです。
【ケース6~代表取締役等住所非表示措置を終了させたい場合~】
それでは最後に、前編【ケース2】でまた別の展開を見てみましょう。
令和7年6月27日付で代表取締役に就任した法務太郎(住所:東京都千代田区霞が関一丁目1番1号)は、その就任登記の際、住所非表示申出を行ったものの、銀行取引等の場面で、代表取締役等住所非表示措置のデメリットの影響が大きいことが判明しました。そこで、従来同様、代表取締役の住所を全て表示することにしたいと考えました。
代表取締役等住所非表示措置は、申出により、終了させることも可能です。なお、この「代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出」に関しては、他の登記申請と同時である必要はなく、単独で行うことが可能です。
「代表取締役等住所非表示措置を希望しない旨の申出」がなされた場合の、登記記録例は次の通りです。
【登記記録例】
上記のように、申出により代表取締役等住所非表示措置が終了し、「令和7年9月1日住所非表示終了」を原因として、代表取締役の住所が表示されることとなりました。もし、また代表取締役の住所非表示措置を希望する場合は、代表取締役の重任登記等の際に申出を行う必要があります。
以上、代表取締役等住所非表示措置について、登記記録例を中心にご説明いたしました。
代表取締役等住所非表示措置の申出手続きは、上場会社か否か、初回の申出か否かにより、必要書類等が異なってまいります。ご不明な点がございましたら、当事務所までお気軽にお問い合わせください。